ベンチマークを活用して、アンケート結果を深く理解する方法
皆さん、こんにちは。生産性高く、幸せな職場づくりは進んでいますか?ラボラティック株式会社代表の野口麗奈です。今日は、従業員エンゲージメントサーベイの結果と基準値に関する、大変興味深い記事をお届けします。ぜひ、皆さんの組織運営のヒントになれば幸いです。注:記事の出典は、ラボラティックとパートナ関係にある、世界的な従業員経験プラットフォームを提供するCulture Ampの「How benchmarking your survey helps contextualize results」を日本の読者様向けに訳したものです。
目次
- ベンチマーキングとは
- 基準値(ベンチマーク)の例
- エンゲージメント調査結果で、ベンチマークが重要な理由
- 従業員エンゲージメントの基準値(ベンチマーク)を設定する方法
- 完璧な基準値(ベンチマーク)などないから、気をつけたい点
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たとえば、自社の直近の従業員調査の結果で、仕事に積極的に取り組んでいる(エンゲーメントの高い)従業員は全体の80%に過ぎないことが明らかになりました。もし、あなたが調査を担当していたとしたら、20%もの従業員が、ただ時間に追われ、仕事の指示待ちなのはなぜなのか、経営チームに警鐘を鳴らそうとしているのではないでしょうか。
Culture Amp社のデータによると、世界中の企業の平均エンゲージメント率はわずか70%です。このデータを基準にすると、自社のエンゲージメント調査の結果は、他社平均を上回っており、まだ、結果を喫緊の課題として取り扱うには時期尚早と言えるのかもしれません。
この逸話は、データが単なる数字に過ぎないことを証明していると言えます。データのみでは意味を持たず、何の文脈(コンテクスト)も伴わないのです。だからこそ、いかなる数字や統計データには、文脈が必要なのです。
このデータに関する文脈は、さらなるデータの詳細を提供したり、数字が何を伝えているのかのイメージを描いたりするのに役立ちます。データのコンテクストを見つける手法は、比較です。基準値(ベンチマーク)はデータを理解するためによく使われる、具体的な比較の方法の1つなのです。
従業員エンゲージメント調査に関して言えば、基準値は、低く見える結果の数字に右往左往しないためにも有効です。さらに、基準値は、状況の改善の優先度や戦略を決める際にも役立ちます。以下では、基準値(ベンチマーキング)とは何か、そしてなぜベンチマーキングが調査結果を理解する上で鍵となるのかを探ってみたいと思います。
ベンチマーキングとは
ベンチマーキングとは、簡単に言えば、比較で活用するデータ指標のことです。ベンチマーキングという言葉は、靴のサイズやボードの長さを示すために、ベンチに印をつけた木工職人や石畳職人に由来しているそうです
APQC(American Productivity & Quality Center)は、ベンチマーキングを「競合他社や同業他社と比較して、主要なビジネス指標を測定するプロセス」と説明しています。ベンチマークは、ある指標の業界平均を示すことができるため、自社がどの程度のレベルにあるのかを即座に知ることができます。
ベンチマークのプロセスは、競合調査や価格設定など、さまざまな分野で見られます。具体的なシナリオにかかわらず、測定しようとしている項目の業界平均を知ることは、自社が同業他社と比較し、結果が上回っているのか、下回っているのかを理解し、状況に応じて調整するのに役立ちます。
基準値(ベンチマーク)の例
ベンチマーキングの一例として、従業員アンケートの参加率(回答率)が挙げられます。アンケートへの参加率が100%であれば、熱心な会社だと思うかもしれませんが、そうとは限らないのです。
現実には、Culture Amp社のデータから、参加率100%の企業が、実はエンゲージメント数値が最低の部類に入っていることが判明しているのです。さらに掘り下げていくと、100%の参加率は強制的な参加を意味することがあり、それはしばしば芳しくない調査結果と同義であることが示唆されているのです。アンケートが従業員のToDoリストになる(つまり、参加を強制する)と、従業員はそのタスクを完了させるためだけに、「強く同意する」や「強く同意しない」ばかりを選択する可能性が高くなるのです。
アンケート参加率の実際の基準値(ベンチマーク)は、会社の規模によリマスが、参加率65%から90%です。
次に、Culture Amp社を例にお伝えします。Culture Amp社が従業員に行ったある調査では、次のような文言への同意を求めました: 「誰かが役割を果たしていないことが明らかな場合、私たちはそれについてアクションを起こします”。
この質問に対するCulture Amp社のスコアは34%でした。生の数字として見ると、34%は低いように思えます。ベンチマークを参照すると、同程度の企業で本質問への同意は48%、全企業の上位10%の結果では、62%でした。こうした比較がなければ、このデータが回答について何を物語っているのかを理解するのは難しいと言えるのです。
エンゲージメント調査結果で、ベンチマークが重要な理由
エンゲージメント調査の結果を理解するために基準値(ベンチマーキング)が必要な理由を考えるときはいつでも、アンドリュー・ラング(スコットランドの詩人・民俗学者)の有名な引用を思い出します。
「ほとんどの人は、統計を、酔っ払いが街灯を使うように利用します。つまり、照らすためではなく、支えとして使っているのです。」
適切なベンチマークを使えば、競合他社と比較して、業界内での自社の立ち位置を知ることができます。これまでの例からわかるように、数字は文脈がなければほとんど意味を持ちません。しかし、ベンチマークを使うことで、必要とされる「街頭=足元を照らす明かり」を提供することができるのです。
ベンチマークは、比較対象や改善すべき点に関するデータを与えてくれます。ベンチマークと比較した結果は、課題を変革の難易度を示すことも可能にします。ベンチマークは、それ自体が戦略を与えてくれるわけではありませんが、何がうまくいっていて、何を改善する必要があるかを(比較を通して)示唆してくれるのです。
従業員エンゲージメントの基準値(ベンチマーク)を設定する方法
自社のベンチマークを設定する際には、関連性と安定性を考慮する必要があります。言い換えれば、基準とする母集団(サンプルサイズ)を検討し、その母集団に含める適切な企業を選択する必要があります。
サンプルサイズについては、20~25社、総従業員数2万人以上を推奨します。サンプルサイズが大きいと、データが特定の方向に偏るのを避けることができ、スコアの広がりが安定することが分かっています。
サンプルサイズの他に、企業のタイプも考慮する必要があります。一般的に、適切な結果を得るためには、自社と類似した企業を基準としたいはずです。たとえば、従業員数が50人未満で技術系の企業であれば、消費者向けパッケージ商品を扱うような大企業は対象外となるでしょう。自社とあまりにも異なる企業をベンチマークに含めると、自社と関連性のないベンチマークが作成される危険性もあります。それでは、対象が適切でなければ、正しい比較ができなくなってしまいますよね。
とはいえ、「少しだけ視野を広げてみる」のも有効でもあります。つまり、まったく同じ企業ではなく、貴社と共通する要素は少ないかもしれないが、ベンチマークに含めることに十分な意味があり、貴社が目指すところに到達するのに役立つような企業に目を向けるということです。
たとえば、競合企業などが「少しだけ視野を広げる」に相応しいと言えます。たとえば、退社時の面談から、従業員の多数が競合他社に転職していることがわかっていたらどうでしょうか? 自社会社が賞賛している(または、負けてなるものかと思っている)競合他社を含めることも、整合性の高いベンチマークデータを作成する方法の1つです。
最後に、自社が達成したいことの模範となるような、ロールモデル的な企業があれば、その企業をデータに含めると、より将来を見越した野心的なベンチマークを示せるようになるので、参考になさってください。
ここでぜひ注意してほしい点を1つ。 ベンチマークの作成は、時間がかかり、困難で、費用が嵩むとったことがよく言われます。これを相殺する方法は、共有されているデータベースや集合知を利用することに尽きます(注:つまり、自社でゼロから構築するのではなく、既成のものを上手に活用しましょう)。
完璧な基準値(ベンチマーク)などないから、気をつけたい点
理想的なベンチマークを探すあまり、分析の沼に陥るのはよくあることです。往々にして、何時間もかけて他社を調査しても、自社が比較したい完全合致のデータ項目は見つからないことの方が多いのです。どの企業もユニークであり、自社と完全に一致するものを探し出すなど、所詮不可能なのです。
重要なのは、さまざまな基準値や基準となる企業をまとめた、ベンチマークデータセットを構築することに他なりません。自社の最終的な目標は、常にエンゲージメント調査の結果の数値をアクションを起こしやすい、より実用的な目標として組み立てることを、常に意識しましょう。
そして、常に、この取り組みが、従業員の自社での経験を改善しようとしていることを忘れないでください。数値を受け止めつつ、従業員の意見に耳を傾けましょう。従業員の洞察や意見は、自社の戦略に反映されるべきであり、多くの場合、こういった視点や意見は、ベンチマークデータの特定の数値より多くの深い見解が含まれているのです。
従業員エンゲージメントを測定するだけでなく、結果から改善まで行っていきましょう。
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