2024年の従業員エンゲージメント動向
皆さん、こんにちは。生産性高く、幸せな職場づくりは進んでいますか?ラボラティック株式会社代表の野口麗奈です。今日は、2024年の従業員エンゲージメント動向について、大変興味深い記事をお届けします。ぜひ、皆さんの組織運営のヒントになれば幸いです。注:記事の出典は、ラボラティックとパートナ関係にある、世界的な従業員経験プラットフォームを提供するCulture Amp社の「The Great Regression: Employee engagement in 2024」を日本の読者様向けに訳したものです。
目次
- 強まる一方の、従業員エンゲージメントの原動力
- 2024年、リーダーに対する理解はさらに1%低下
- 仕事の取引的側面は、従業員から最も不一致を引き出す
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仕事の世界は常に流動的だと言われますが、2024年については何かが違うと感じていました。単に人事業界のトレンドの浮き沈みの話ではなく、従業員が何を期待し、何に価値を見出すかといった本質的な思考の変化のように思っていました。もちろん、新しい世代の従業員の参画や、別の世代の定年退職も一因かもしれません。もしかしたら、パンデミックを経験し「共に強くあらん」という、私たちの意識の回帰なのかもしれません。はたまた、皆さんの従業員もまた、過去に変化を余儀なくされる状況を経験し、今は、とにかく安定を切望しているのかもしれません。
カルチャーアンプ社では、従業員エンゲージメントを3つの要素からなる心理状態と考えています。3つの要素とは、会社に対する熱意、期待を超えて成果を出そうとする意欲、そして長く働き続けようとするコミットメントを指します。
https://note.com/embed/notes/n96bf3d81ac94
さて、2024年の従業員エンゲージメントとその促進要因についてより深く理解するために、私たちはデータを深く掘り下げました。
注)Culture Amp社は、のべ13億のデータを所有しています。これらのデータをもとにしたデータと共に、以下の洞察を記載しています。
そこで見えてきたものとは?
私たちは、従業員エンゲージメントの変化を「大回帰(Great Regression)」という造語で位置付けました。
世界的に、従業員エンゲージメントはパンデミック以前の水準に戻り、71%にとどまっています。一方で、この安定したエンゲージメント・レベルに影響を与える世界的な出来事の数々は、決して静的に捉えられません。
エンゲージメントはパンデミック以前のレベルで安定している
昨年1年間、世界中の従業員は、経済の不確実性、AIの破壊的な進化、進行中の戦争、各種の選挙(大統領選など)、DEI(多様性)への反発、ハイブリッドワークへのシフトなど、未知の出来事と闘ってきたといっても過言ではありません。さらに、従業員は、人材市場が大きく有利だった「大転職時代(the Great Resignation)」を経験しながら、これらの未知の問題に対処してきた言えます。
しかし、2024年ーー状況は一転するのです。
世界的に見れば、エンゲージメントは横ばいになっていると言えますが、特にヨーロッパ地域では、徐々にエンゲージメントに翳りが出ている国も散見されます。
カルチャーアンプ社のエンゲージメント・インデックスの質問項目を分けて確認していくと、ここ数年の従業員エンゲージメントに何が起こっているのかがより詳細に見えてきます。
従業員のコミットメントと推薦意欲は安定しているが、誇りとモチベーションは低下し続けている
従業員の誇りやモチベーションの低下は、パンデミック時代の約束が果たされていないことに起因している可能性があると言えます。たとえば、それまで享受していた柔軟なワークスタイルやライフワークバランスが保ちにくくなってきたことなども一因かもしれません。さらに、多くの企業が人材資源に焦点を当てたリソースを削減する状況もあり、従業員は職場で「従業員に対するケアを感じにくくなっているかもしれません。
従業員のエンゲージメント自体が、従業員の心理状態そのものでもあります。その一方で、多くの企業が、エンゲージメントレベルに最も効果的かつ効率的に影響を与える方法を理解したいと考えているのも事実です。では、実際に効果的かつ効率的に影響を与えているものは何かを導出すべく、私たちはドライバー、つまりエンゲージメントに相関する従業員体験の側面に注目してみました。
強まる一方の、従業員エンゲージメントの原動力
エンゲージメントの源泉となる上位のドライバーは基本的に変わっておらず、時間の経過とともにさらに強力な予測因子となっています。これらの領域は地域によって若干異なりはすれど、上位3つのドライバーは世界的に共通しているのです。
リーダーシップへの信頼は、カルチャー・アンプを最も多く利用する世界各国において、エンゲージメントを高める要因の第1位である。
リーダーに対する信頼感がエンゲージメントを高める要因のトップに浮上したが、従業員にそのことを尋ねる企業が減少していることを考えると、この結果はやや意外なものとなりました。2019年では、従業員に対してリーダーに対する信頼を54%程度の企業がフィードバックを求めていたのに対し、2024年時点では、37%まで減少しているのです。
この減少は、そもそも企業側が、従業員側からの回答内容への懸念や、回答を受領したとしても、問題に対処するためのリソースを割く用意がないという理由から、この話題を避けている企業があることを示唆しています。
懸案は残りますが、中核となるドライバーが安定しているという事実は重要です。自社の人事チームは、これまで気にしてきた重点分野が、依然としてエンゲージメントに影響を与える可能性が高いことを認識した上で、取り組みを推進していくことに変わりはありません。
上位のエンゲージメントの原動力となる因子に変化はないのですが、「自分の役割で成功するために必要なことが分かっている」という指標が、エンゲージメントの原動力として順位を上げているのは特筆すべき点と言えそうです。この結果は、昨今は、仕事を進める上で、明確さとサポートがより重要になってきていることを示唆しています。
2024年、リーダーに対する理解はさらに1%低下
また、リーダーシップに関する質問に対する回答も、パンデミック前のレベルに戻りつつあります。2020年に大きく上昇して以来、リーダーシップに対する意識・認識は継続的に低下してきたのですが、低下の割合は、鈍化しているとも言えます。
リーダーシップに対する認識は、パンデミック以前のレベルに向かって低下し続けている。
この傾向は、世界的に指摘されているような、継続的な経済の不確実性、AIの破壊的な力、リストラ・組織的な人員削減(RIF)の波など、同様の要因が重なって影響していると考えられます。これらの減少は、リーダーシップに対する信頼の低下を直接示すものではないかもしれませんが、初期のパンデミックの際に従業員が非常に重要だと感じた透明性、コミュニケーション、サポート、人間性を維持することが、いかに重要かを管理職や経営層にリマインドしているかのようです。
多くの従業員がリーダーシップの延長線上にあると認識している会社に対する揺るぎいない信頼も、パンデミック後は打撃を受けています。
企業への信頼感は低下し続けており、パンデミック前の水準まで後退している。
今後3年間、会社が成功すると確信しているか? という調査項目について、従業員の好感度はパンデミック以前のレベルを下回っていることも顕著なのです。具体的には、2019年の水準を3%下回り、過去最高だった2021年の80%が好感を持ってて回答していた本結果を7%ほど下回っています。また、従業員が「会社が成功すると確信しているか?」という質問項目に回答する際には、社内のみならず、社外の市場状況の両方に目を向けていると考えられています。また、こういった回答の背景には、リーダーシップに対する評価が一役買っているのは自明ですが、インフレ、サプライチェーンの混乱、市場の需要の変化などがもたらす課題などが、会社の長期的な成功に対する従業員の信頼を損なう可能性があることも示唆しています。
2024年、従業員は感情に関わる事柄について最も好意的な反応を示している
世界的な混沌のように感じられるかもしれないが、2024年の従業員は、自分の仕事の意義、会社の成功への貢献、チームの人々との関係など、感情面に関する事柄に非常に好意的であることも分かっています。自分の仕事の意義や、それが会社の成功にどのように貢献しているか、そしてチーム内の人々との関係性。仕事を通じて従業員の生活が豊かになることで、彼らが最も順調だと感じているとも言えそうです。
従業員は、仕事への貢献と職場への貢献について最も好意的である。
仕事の取引的側面は、従業員から最も不一致を引き出す
最も好意的な領域もあれば、そうでない領域もあります。従業員は、自分と組織との取引に関する調査項目に対して、最も好ましくない(積極的に同意しない)と回答しています。これには、報酬、仕事上のストレス、仕事量などが含まれます。
従業員は、仕事の取引・契約面に関する質問に最も同意していない。
報酬や仕事量といった仕事の取引的側面は、自分の置かれた状況を他人と比較するという極めて人間的な傾向と相まって、従業員のエンゲージメントに影響を与えています。従業員の5人に1人が他社への転職を考えているという事実が証明しているように、従業員はこうした要素を不公平だと感じると、他で働く機会を探し始めるのです。
ストレス、報酬への懸念、離職意向、仕事量の公平性はすべて、従業員の仕事への意欲や能力を低下させる要因といえます。世界の従業員の25%が過度のストレスを感じていることから、仕事上のストレスの責任を誰に、あるいは何に求めるのかという疑問も生まれます。企業はこのような懸念に十分に対処できているのでしょうか? それとも不注意に人材を遠ざけてしまっているのでしょうか?
従業員は、自身での職場での経験で、進行中または開発中の側面について最も中立的である
2024年、従業員体験の中で最も従業員が「迷っている」のは、行動を起こすことと説明責任に関する領域でした。
従業員は、説明責任や行動といった職場の「日和見」的側面について最も中立的である。
従業員の特定の領域に対する中立的なスタンスは、希望に満ちた一時停止と見なされており、従業員の考え方に対して興味深い洞察を提供しているといえます。企業が、従業員が成功するために必要なツールやガイダンスを提供していけると、組織が不確実な事態に直面しても、組織としての統制や目的意識を醸成していけるのです。
パンデミックは、雇用主と従業員が自身の弱さに向き合い、本当に重要なものを再評価するきっかけとなる転換期でした。その結果、私たちはよりエンゲージメントが高く、目的意識に満ちた職場の未来を垣間見ることができました。それは短い時間でしたが、変化の可能性を示唆するものであったといえそうです。これから先、従業員たちは単に過去の期待に戻るのではなく、リーダーに対して新しい時代の透明性、人間性、そして謙虚さを求めています。組織に求められる課題は、この変化を受け入れ、信頼と共感が職場の繁栄を支える礎となる環境を育むことなのです。
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ラボラティック株式会社 広報担当