なぜ、優秀な社員が辞めていくのか? 優秀な人材を定着させるには?
皆さん、こんにちは。生産性高く、幸せな職場づくりは進んでいますか?ラボラティック株式会社代表の野口麗奈です。今日は、優秀な社員の辞職とう非常にデリケートなテーマについて、大変興味深い記事をお届けします。ぜひ、皆さんの組織運営のヒントになれば幸いです。注:記事の出典は、ラボラティックとパートナ関係にある、世界的な従業員経験プラットフォームを提供するCulture Amp社の「Why your best employees are leaving and how to stop it」を日本の読者様向けに訳したものです。
目次
- 従業員が退職する一般的な理由は3つ
- 最も会社が引き止めたいと思う従業員も同じ理由を上げている
- 退社は「遺憾である」とされた退職者は、率直に不満を伝えていた
- 退職者を予測する最良の方法とは? 聞いてみるしかない
- 従業員は退職の理由についても伝えている
- 最初の一歩を踏み出す
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世界的な「大退職(転職)時代」の最中、2021年1月から8月に退職した10万人以上の従業員を対象に再度分析を行いました。以下で説明する退職予測要因はほぼ同じでしたが、1つ重要な違いがありました。それは「業務の円滑な遂行を支える仕組み」です。具体的には、仕事に必要な情報への簡単なアクセスができないことが、新たな退職要因となっていたのです。この問題は、リモートでオンボーディングした従業員だけでなく、長期勤続の従業員にも共通して見られました。リモートで働く組織は、内部コミュニケーションとナレッジマネジメントに重点を置き、従業員が分散した状態でも円滑に働ける環境を整える必要があります。
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離職率は、組織の健全性を測る重要な指標であり、経営陣がしばしば注目するポイントです。「なぜ従業員が辞めるのか」といった質問に答える際に戸惑いを感じるなら、それはあなただけではありません。調査結果が二転三転し、従業員がマネージャーのせいで辞めるという話が出たかと思えば、次にはそうではないとされるなど、何が正しいのか判断するのは難しいものです。実際、Culture Amp社もこの議論に過去に加わったことがあります。もし、今、皆さんの頭が混乱しているとしても、安心してください。誰もが同じ気持ちだったのです。
https://note.com/embed/notes/na5a7bc143748
そこでCulture Amp社では、「なぜ従業員が辞めるのか」という組織が直面する厳しい質問に対して、何かしらの必要な文脈を提供すべく、過去最大規模の従業員の離職に関する調査を行ったので。その結果から、次のような点が判明しました。
- 従業員が退職する主な理由は3つほど存在している
- マネージャーを引き留めるためには、インクルージョン(包摂性)が最も重要である。
- 最も引き留めたい従業員ほど、不満を率直に表現する傾向がある
- 誰が退職するか予測するためには、従業員に聞く必要がある
これらの洞察を得るために、私たちはCOVID前の15ヶ月間に自発的に退職した30万人以上の従業員のアンケート回答を分析しました。退職時のアンケートと、退職前のエンゲージメント調査の回答を比較し、さらに個々の従業員に関する情報(勤続年数、マネージャーであるかどうか、退職が人事チームから「惜しい」と見なされていたか)も取り入れました。この分析により、従来から信じられていた神話のいくつかを打ち破ることができました。たとえば、「従業員はマネージャーのせいで辞める」というのは誤りでした。さらに、これまで誰も報告していなかった新たな洞察も発見しました。それでは詳しく見ていきましょう。
従業員が退職する一般的な理由は3つ
退職者と残留者を比較すると、退職した理由として次の3つが重要な要因でした。
- キャリア成長: 退職者は「[会社名]で良いキャリア機会があると信じている」という質問に対して、残留者よりも肯定的ではありませんでした。さらに、キャリアや成長機会の不足が、退職時に3人に1人が退職理由として挙げていました。
- 役割の期待: 予想通り、「最初に説明された役割に満足しているか」という質問でも、退職者は肯定的な回答が少なかったです。
- インクルージョン(包摂性): 退職者は、自分が組織に属していると感じる傾向が低かったです。
これらの質問に対する退職者の平均スコアは、残留者よりも7ポイント低かったのです。
💡 洞察:従業員が退職する主な理由は、マネージャーではなく、成長を感じられないこと、役割が期待と合っていないこと、または会社での包摂感が得られないことが原因である可能性が高いです。
最も会社が引き止めたいと思う従業員も同じ理由を上げている
離職は常に難しい問題ですが、すべての離職が同じ影響を持つわけではありません。そこで、私たちは従業員の勤続年数、マネージャーの立場、そして離職が「惜しい」とされるかどうかの3つの属性を基に、離職時に最も大きな影響を与える従業員を特定しました。これらの従業員に関しても、前述の3つの質問(キャリア成長、役割の期待、インクルージョン)が主要な要因として浮かび上がりましたが、いくつかの注目すべき違いも見られました。
キャリア成長は勤続年数に関係なく重要である
最も長く勤めている従業員が退職すると、彼らが持つ長年の知識も一緒に失われるため、特に大きな痛手となります。多くの人は、キャリア成長の必要性が勤続年数によって変わると考えるかもしれません。しかし、退職時に挙げられた理由を見てみると、どの勤続年数グループにおいても成長が最も重要な理由であることがわかりました。これは、1年未満で退職した早期離職者、4年以上勤めた長期勤務者、その中間の従業員すべてに当てはまりました。特に重要なのは、成長が必ずしも役職の昇進だけを意味するわけではないということです。多くの従業員は、学習や成長の機会、チャレンジングなプロジェクトへの参加を求めていました。
💡 洞察:従業員を引き留めるためには、勤続年数に関係なく、それぞれの従業員にとって「成長」が何を意味するのかを把握することが重要です。
マネージャーを引き留めるには、彼らが組織に包摂されていると感じているかをかくにんする必要がある
マネージャーが退職すると、そのチームのダイナミクスが大きく変わる可能性があります。さらに、マネージャーの代替を採用するには、個別の従業員の採用よりも時間がかかることがあります。調査の結果、マネージャーにとってインクルージョン(包摂性)がさらに重要であることがわかりました。退職したマネージャーたちは以下のような特徴がありました。
- 「自分の意見を共有すると、それが評価される」との質問で9ポイント低い
- 「自分の視点が[会社名]の意思決定に含まれている」との質問で11ポイント低い
これは、典型的な中間管理職のパラドックスによるものかもしれません。マネージャーはリーダーとしての役割を果たす一方で、部下の声を代弁しなければならないのです。もし彼らが自分がチームを良い代表として表現できない、あるいは真剣に受け止められないと感じると、他の場所に移ることを選びます。
💡 洞察:マネージャーの離職を防ぐためには、マネージャー(そして全ての従業員)に、自分の声が反映され、意思決定に含まれていると感じているかどうかを必ず尋ねることが重要です。
退社は「遺憾である」とされた退職者は、率直に不満を伝えていた
約10,000人の従業員について、人事チームはその退職を「惜しい」と評価しました。この定義は会社によって異なりますが、一般的にはその個人が高いパフォーマンスを発揮しており、会社としては彼らを引き留めたかったという意味です。驚くべきことに、これらの従業員は、惜しくないとされる退職者よりも、不満を率直に表現する傾向があり、全体の評価が10ポイント低かったです。
以下の表では、離職の主な3つの要因におけるこのパターンが示されています。「惜しい」とされた退職者の評価は、私たちのグローバルベンチマークデータの中で下位10パーセンタイルに位置するほど低かったのです。
💡 洞察:エンゲージメント調査のスコアが低い場合、どの従業員が不満を持っているのか疑問に思うことがあるかもしれません。この調査は、彼らがあなたが最も引き留めたい従業員である可能性が高いことを示しているのです!
退職者を予測する最良の方法とは? 聞いてみるしかない
Culture Amp社が調査した質問の中で、最も退職に関する予測度合いが高かったのは、将来のコミットメントに関する項目、「2年後も[会社名]で働いている自分が想像できる」との質問でした。
- この質問に対して強く反対した(全くそう思わない|同意しないといった回答をした)人は、他の選択肢を選んだ人よりも2.7倍退職する可能性が高かったのです。この影響は「遺憾」とされる退職者においては、彼らは自分の意思率直であるため、退職する可能性が前述の2.7倍の影響の2倍になってしまうのです。
- 反対した人は、中立または同意した人(どちらとも言えない|そう思う)と比べて約2倍の退職可能性がありました。
- さらに、中立な人でも、同意した人に比べて退職する可能性が50%高かったのです。
この結果は、2017年の調査結果とも一致しています(つまり、再現性が高いのです)。
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💡 洞察:従業員に会社に留まる意向があるかどうかを尋ねることが、離職を予測する最良の方法です。上記の比率を参考にして、大まかな予測を行いましょう。
従業員は退職の理由についても伝えている
Culture Ampが提供する退職時のアンケートでは、従業員に退職の主な理由を尋ねています。調査の結果、退職時に選ばれた理由は、数ヶ月前のエンゲージメント調査の回答にも反映されていることがわかりました。
- 「マネージャー」を退職理由として選んだ「退職自体が遺憾(本当は残って欲しい)」従業員は、エンゲージメント調査のマネジメント要素において、全体の下位5パーセンタイルを下回るスコアを記録しています。このスコアは、マネージャーを退職理由として挙げなかった「本当は残って欲しい」従業員に比べて29ポイントも下回る結果です。
- 同様に、「リーダーシップ」を退職理由として選んだ従業員も、リーダーシップ要素において下位5パーセンタイルを下回るスコアでした。
- また、「他社の同様の役割に対して、自分の総報酬が公平であると感じている」という報酬に関する質問でも、同様のシグナルが見られました。
💡 洞察:従業員が特定のトピックに関して不満を率直に表現し、その問題が解決されない場合、彼らはその理由で退職することになります。
最初の一歩を踏み出す
Culture Amp社の調査結果に基づくと、次のような確信があります。
- 従業員は、退職の意向がある場合には、(調査結果が)その兆候を教えてくれます
- 彼らは退職の理由についても示唆しています
- あなたが最も引き留めたい従業員(遺憾な退職者)は、非常に率直なフィードバックをしています
ところで、Culture Amp社の調査は、人事チームによって退職する従業員を「遺憾(本当は残って欲しい)」とフラグをつけていたため、容易に遂行できたのです。ただし、皆さんに忘れてほしくないのは、残念ながら、このフラグは従業員が退職した後にのみ発生している点です。先手を打つためには、以下のことを実施してください。
- エンゲージメント調査の結果にパフォーマンス評価をフィルターとして含め、高パフォーマンスの従業員の経験がどのように異なるかを確認していく
- 最も予測力のある質問を必ず尋ねるようにしましょう。「2年後も[会社名]で働いている自分が想像できる」と直接聞くことや、キャリア成長、役割の期待、インクルージョンについて間接的に質問していくことも可能です
これらを実施すれば、高パフォーマンスの従業員が重要な決断を下す前に、その退職を食い止めることができるかもしれません。
Culture Amp社のプラットフォームでは、エンゲージメント関連の離職に関するこれらの洞察がすでに製品に組み込まれています。私たちは、離職リスクを特定し、従業員の体験を改善するためにのご支援をしています。
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ラボラティック株式会社 広報担当