業績の良い従業員をどのように評価するか
皆さん、こんにちは。生産性高く、幸せな職場づくりは進んでいますか?ラボラティック株式会社代表の野口麗奈です。今日は、従業員の中でも、ハイパフォーマー(いわゆる、組織のエース社員)をどのように評価していくかについて、大変興味深い記事をお届けします。ぜひ、皆さんの組織運営のヒントになれば幸いです。注:記事の出典は、ラボラティックとパートナ関係にある、世界的な従業員経験プラットフォームを提供するCulture Amp社の「How to recognize your top-performing employees」を日本の読者様向けに訳したものです。
目次
- パフォーマンスマネジメントと評価の関係
- 優秀な従業員を評価するためのヒント
- 1. 評価観点の多様化
- 2. 従業員がどのように評価されたいかを考慮する
- 3. 従業員への賞賛と評価の違いを理解して取り組む
- 4. データを活用して成果を分析する
- 5. パフォーマンスに対して「成長志向」のマインドセットを持たせる
- 効果的に従業員を評価する
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従業員の評価は、従業員の業績を向上させるための強力なツールと言えます。適切に設計された従業員の評価プログラムは、エンゲージメントや生産性といった重要な指標を向上させる効果があります。
この記事では、目標管理(パフォーマンスマネジメント)と評価の関係を掘り下げ、高い成果を出し、エース社員とかトップパフォーマンスを発揮した従業員の方々に報いるための具体的なヒントをご紹介します。
パフォーマンスマネジメントと評価の関係
Culture Amp社では、プラットフォームを利用する6,000社以上の顧客からの洞察を収集しました。このデータと査読済みの研究論文により、従業員が仕事に対して意欲的に取り組めていない(エンゲージメントが低い状態)場合、従業員個人が持つ最大限のパフォーマンスを発揮する可能性が低いことが明らかになりました。企業文化を重要視する企業では、エンゲージメントを測定し、目標管理や評価を行うだけでは十分でない点を理解して運営をしているのは自明のことでしょう。だからこそ、データを活用して従業員のエンゲージメントを向上させる戦略を策定し、それによって人々が持てる力を最大限発揮できる環境を整える必要があるのです。
潜在的な戦略の焦点を明確にするために、Culture Amp社は数千のデータポイントを分析しました。その結果、報酬と評価がエンゲージメントを高める最も重要な要因のひとつであることが判明しました。これは業界や地域を問わず一貫して見られる傾向です。また、調査では、このような評価へのニーズは特に高い業績を上げている従業員に顕著であり、彼らは優れたパフォーマンスに対して正当に報われることを強く望んでいることが明らかになりました。
これを踏まえると、従業員のエンゲージメントを高めるための重要な要素の一つが「評価」であることは明らかです。しかし、従業員をどのように効果的に認識するか、特に高いパフォーマンスを発揮している個人に対してはどうすれば良いのでしょうか?
この問いについて、次のセクションで詳しく掘り下げていきます。
優秀な従業員を評価するためのヒント
Culture Amp社が過去にパートナー企業と実施したウェビナーでは、高い業績を上げている従業員をより効果的に認識し、報酬を与えるためのさまざまな戦略について議論しました。以下は、パートナーから共有された主要なアドバイスのいくつかをご紹介します:
1. 評価観点の多様化
評価の観点として取り入れる点は次の3点と言えます。
- 日々の評価:初期の評価は、全従業員がアクセスできるものであるべきで、通常は言葉による称賛として行われます。たとえば、Culture Amp社では、「Shoutouts(シャウトアウト)」というリアルタイムの従業員表彰ツールを使用しています。このツールは、行動を祝福し、従業員同士の交流を促進・強化することで、組織文化を意図的に形成し、パフォーマンス向上に繋がります。また、このツールはCulture Ampのプラットフォームに組み込まれているため、従業員が簡単に同僚の功績を評価し、称賛することができます。
- 非公式な評価:第2段階は非公式な評価で、通常、全社員の25%から30%が受け取っていると言われます。これは、プロジェクトで特に優れた成果を上げた社員や、その他の注目すべき貢献をした社員に対して与えられる一時的な褒賞(ギフトカードなど)と呼ばれるものです。また、会社の価値観を体現する素晴らしい仕事をした社員にも与えられることがあります。単発で行われる褒賞などは、非公式な表彰の一例と言えるでしょう。
- 評価・表彰制度:最後に、3段階目は、上位5%から10%のトップパフォーマンスを発揮した従業員にのみ与えられる正式な評価(評価でAランクをもらうなど)と表彰です。正式な評価の報酬として、企業によっては、長期の休暇だとか、体験型ギフトなど、特別な報酬の形をとることがあります。これらは、まさに会社の業績に貢献し、卓越した社員に対して与えられるものです。
上記の3つの段階を活用し、評価を多様化する(幅をもたせる)ことは重要です。これにより、組織内の全員が表彰される機会を得るだけでなく、真に優れた業績を上げているトップパフォーマンスを発揮した従業員とそれ以外の社員を明確に区別することができます。
2. 従業員がどのように評価されたいかを考慮する
すべての従業員が職場での努力を公に認められたいとは限りません。従業員の嗜好に対して理解を深めるほど、彼らが有意義に感じ、モチベーションを高めるような評価や承認をより効果的に伝えることが可能になります。そのため、直属の部下と最も多くの時間を過ごすマネージャーは、有意義な評価を行う上で重要な役割を担っていると言えるでしょう。
以下は、マネージャーが実施できる評価の一例です:
注:一部の事例は、日本では馴染みが薄く、浸透していないものもあります
- チームの業績を強調する月次メールの送信
- 従業員の趣味や嗜好に合わせたパーソナライズギフトの贈呈
- 追加のPTO(有給休暇)を1日付与する
- 手書きのカードやメモを送る
- 電話やSlackチャンネルなどで従業員の功績を公に祝う
3. 従業員への賞賛と評価の違いを理解して取り組む
評価(Recogntion)と賞賛(Appreciation)は似ているようで異なる概念であり、職場ではしばしば混同されがちです。Culture Amp社では、評価と賞賛をどのように捉えているかをご紹介します。
- 評価は会社にとっての価値(=成果)に焦点を当てるのに対し、賞賛は個人の価値に焦点を当てます。
- 評価はトップダウンで行われることが多いですが、賞賛は誰からでも、どこからでも行うことができます。
- 評価は通常、成績優秀者に限定されます。同じ業績サイクルで昇給できるのは限られており、昇進も数年に一度のことが一般的です。一方、賞賛は全ての社員に向けられ、いつでも行うことができます。
「賞賛」と「評価」はどちらも従業員に感謝の意を示す重要な方法ですが、それぞれ職場で果たす役割は異なります。以下を見比べてみてください:
評価
「前回の報告書は素晴らしい出来でしたね。調査チームから、あなたが非常に協力的で、フィードバックにも迅速に対応していたと聞いています。先週、あるお客様からも、あなたが共有した洞察に対してお褒めの言葉をいただきました。」
賞賛
「あなたと一緒に働けて本当によかったです。いつもチームの皆を気遣ってくれるおかげで、あなたが加わってから、みんなの連携が格段に良くなりました!」
このように、企業やマネージャーには「評価」と「賞賛」の両方を必要に応じて使い分けていけると良いでしょう。その際には、評価とは高い業績を上げている従業員の努力が何らかの形で会社から報われた結果として、従業員が受け取るものだーと言う点に留意してください。
ヒント:評価が引き起こす可能性のある意図しない結果に注意すること
常に(特に日常的に)評価を受けている社員は、他の社員の士気を下げる原因となることがあります。これにより、組織内でえこひいきや偏見があると感じる社員が出てくるかもしれません。そして、その感覚が正しい場合もあります。マネージャーやリーダーには、偏りを最小限に抑え、公平に評価を行うために必要なツールや知識を提供しましょう。
Culture Amp社の記事より翻訳
4. データを活用して成果を分析する
評価や目標設定の取り組みが効果的だと思い込むのは簡単ですが、実際に成果を測定してみないとその真価はわかりません。そこで活躍するのが、Culture Ampプラットフォームです。このプラットフォームのサーベイを活用すれば、表彰や評価プログラムが従業員にどのように影響を与えたのかを測定するための質問を設計し、エンゲージメントの状態を評価することができます。また、統計データを切り口に比較を行うことで、特定のプログラムがどのセグメントに最も大きな影響を与えたかを特定することも可能です。
このような対応は、自社の投資がビジネス成果に確実に影響を与えていることを示す重要なデータです。人事や組織運営のリーダーとして、データをもとに、プログラムの有効性を明確に示すことが求められています。たとえば、表彰や評価プログラムがエンゲージメントの向上やコスト削減、離職率の低下につながることを証明できれば、追加予算が承認される可能性が高まります。その結果、翌年にはトップパフォーマンスを発揮した従業員にさらに充実した形で報いることができるようになるでしょう。
5. パフォーマンスに対して「成長志向」のマインドセットを持たせる
最後に、質の高いパフォーマンスを評価する際の考え方を見直すことが重要です。この記事全体を通じて、私たちが「トップパフォーマー」という言葉ではなく、「トップパフォーマンスを発揮した従業員」という表現を使用していることにお気づきかもしれません。これは、「トップパフォーマー」という言葉が、従業員のパフォーマンスをあたかも固定的な特性であるかのように感じさせるためです。まるで、一部の従業員は生来トップパフォーマーであり、他の従業員はそうではないかのように捉えられる可能性があります。
私たちは「成長志向」のマインドセットに根ざして、適切な機会が与えられれば、すべての従業員がトップパフォーマンスを発揮できる可能性があると信じています。また、高い成果を出している従業員に対し、常に最高の結果を出し続けることを期待するのは不公平ともいえます。誰しも仕事には浮き沈みがあり、それを踏まえて評価や表彰プログラムには柔軟な対応が求められます。だからこそ、私たちはどのようなパフォーマンスが評価につながるのか、明確な期待値を設定する必要があるのです。そして、すべての従業員がその期待に応えるために必要なツール、リソース、そしてサポートを確実に得られる環境を整えることも求められているのです。
効果的に従業員を評価する
適切な表彰や評価プログラムを導入すれば、従業員のエンゲージメントやパフォーマンスを向上させる大きな一歩を踏み出すことができます。これらのヒントを活用しながら、従業員一人ひとりのニーズに応じた、有意義で効果的なプログラムを設計してみてください。また、表彰や評価のアイデアを考える際には、ぜひ創造性を発揮してみましょう!