
医療機関が従業員のバーンアウトと離職にどう立ち向かっているか

皆さん、こんにちは。生産性高く、幸せな職場づくりは進んでいますか?ラボラティック株式会社代表の野口麗奈です。今日は、医療機関の従業員の方がどのようにバーンアウトや離職に立ち向かっているかについて、日本でも医療の逼迫などが叫ばれる昨今では、喫緊の課題とも言える大変興味深い記事をお届けします。この記事を通して、皆さんの組織運営のヒントになれば幸いです。注:記事の出典は、ラボラティックとパートナ関係にある、世界的な従業員経験プラットフォームを提供するCulture Amp社の「How healthcare providers are fighting employee burnout & turnover」を日本の読者様向けに訳したものです。
目次
- 従業員のキャリア成長への投資
- 従業員エンゲージメントの向上が患者の安全性を高める
- ダイバーシティ&インクルージョン(DEI)の推進
- 人材定着への本気の取り組み
- Culture Ampを活用し、従業員体験を診断し、改善へと導く
ここ数年、医療業界は特に厳しい状況に直面しています。バーンアウトの増加、高い離職率、人手不足、過重労働、そして専門的な成長の機会の不足など、医療機関が抱える課題は数多くあります。実際、ある調査では、「労働力の課題」が病院のCEOにとって2023年の最重要課題であるとされました。これは、3年連続でトップの懸念事項となっています。
企業やその従業員だけでなく、医療業界全体もこうした厳しい状況の影響を受けています。医療従事者(HCP)の半数以上が、バーンアウトが医師の臨床ケアの質に頻繁に影響を及ぼしていると考えており、さらに3分の2が、パンデミック以降、バーンアウトが悪化したと感じています。患者の安全を守り、質の高い医療を提供するためには、医療機関が従業員の健康と福祉を守ることが不可欠です。
この継続的な課題に対処するため、医療機関は従業員の声に耳を傾け、改善の余地がある領域を特定し、職場環境の向上に向けた施策を実施する必要があります。実際、多くの大手医療機関がこれらの取り組みを進め、その成果を上げています。本記事では、4つの主要な医療機関がどのようにして人材の定着率を向上させ、職場環境を改善し、従業員エンゲージメントを高め、そして最も重要なこととして、より質の高い患者ケアを実現しているのかを紹介します。
1. 従業員のキャリア成長への投資
2019年当時、バイオテクノロジー企業の Blueprint Medicines には、体系的なパフォーマンスレビューやキャリア開発の仕組みがありませんでした。レビューは主にWordドキュメントに保存されていましたが、年間を通じてほとんど参照されることがなく、従業員の成長を効果的に支援することが難しい状況でした。しかし、企業の成長に伴い、Blueprint Medicinesはよりダイナミックなアプローチの必要性を認識し、Culture Ampのパフォーマンスレビュー、エンゲージメント調査、キャリア開発ツールを導入しました。
Blueprint MedicinesはCulture Ampのピープルサイエンスチームと協力し、同社のコンピテンシー(業務遂行能力)をCulture AmpのDevelopツールに組み込みました。これにより、マネージャーは従業員のスキル、成長目標、パフォーマンスデータに素早くアクセスできるようになりました。これらのツールを活用することで、個々の従業員に適した成長機会を特定し、より効果的なキャリア開発の対話を行い、チームの成長を最適にサポートするための意思決定が可能になりました。
では、Culture Amp導入後の同社の変化とは? Culture Ampを導入して以来、従業員は自己振り返りを行い、キャリア開発に関する対話に積極的に参加するようになりました。また、マネージャーは従業員のキャリア成長をより効果的にサポートできる環境が整いました。
Blueprint Medicinesの調査結果からも、これらの新しいツールとプロセスがどれほどの影響を与えたかを示しています。同社の主な成果は以下の通りです。
- 88%の従業員が「自分の役割で成功するために何をすべきかを理解している」と言う問いに対して肯定的に回答
- 80%の従業員が「マネージャーは私のキャリアの目標に真剣に関心を持ち、達成を積極的に支援してくれる」と言う問いに対して肯定的に回答
- 80%の従業員が「マネージャーは、うまくいっている点や改善できる点について、有益なフィードバックを提供してくれる」と言う問いに対して肯定的に回答
このように、Culture Ampの導入により、従業員のキャリア開発が促進され、マネージャーとの建設的な対話が増え、組織全体のエンゲージメントが向上したのです。
2. 従業員エンゲージメントの向上が患者の安全性を高める
ミシガン州北部で最大の医療システムを誇るMunson Healthcareは、従業員エンゲージメントと患者の安全性の関係性を探るため、Culture Ampと提携しました。Culture Ampの**リンク分析(linkage analysis)**を活用した結果、従業員エンゲージメントが高いほど、患者の安全性スコアが向上するという強い相関関係が明らかになりました。
「Culture Ampのピープルサイエンティストの協力により、当社の看護師がいかに患者の安全を重視しているかを測定できました。そのため、看護師の離職を防ぐには、患者の安全への強いコミットメントを継続的に強調する必要があります。Culture Ampの優れた点は、このような相関関係を明確に示してくれることです」
— Sarah Robinson, 学習・組織開発マネージャー
この分析では、従業員を患者対応部門、非患者対応部門、組織全体の3つのグループに分類。驚くべきことに、患者と直接関わらない従業員のエンゲージメントも、患者の安全性に大きな影響を与えていることが判明しました。
このインサイトを得たSarah氏とそのチームは、患者の安全性を向上させるためには、組織全体の従業員エンゲージメントを強化することが不可欠であると確信。現在Munson Healthcareでは、従業員エンゲージメントを包括的に向上させ、リーダーシップチームとのつながりを深めるプログラムや機会の創出に取り組んでいます。リンク分析を活用し、組織全体の支持を得ながら、この取り組みをさらに推進しているのです。
3. ダイバーシティ&インクルージョン(DEI)の推進
全米最大の州医療保険交換所であるCovered Californiaは、全米でも特に多様な人口を抱える地域にサービスを提供しています。そこで同社は、地域社会との信頼関係を築き、従業員と強く結びつくために、2020年にダイバーシティ&インクルージョン(DEI)を最優先事項として位置づけることを決定しました。
最初の取り組みとして、外部のDEIコンサルタントを採用し、組織全体から従業員を集めた内部DEIチームを結成。さらに、Culture AmpのDEIサーベイを導入し、組織内の現状を測定しました。
サーベイ結果をCulture Ampのピープルサイエンティストと分析した後、Covered Californiaは3年間のDEI戦略計画を発表。具体的な施策として、以下のような取り組みを実施しました。
- DEIスピーカーシリーズの開催(社員の86%が支持)
- 社内ポータルサイトにDEI専用ページを開設
- 会社のDEI戦略ロードマップを共有
- 社員向けの月刊ニュースレターにDEI特集を追加
これらの施策の結果、DEIの進捗に対する社員の認識が10%向上。さらに500件以上のコメントが寄せられ、複数のDEI施策がポジティブな影響を与えていることが示されるなど、Covered Californiaの包括的で支援的な職場づくりへの取り組みが大きな成果を上げています。
4. 人材定着への本気の取り組み
従業員のバーンアウトと離職を未然に防ぐため、プライマリケア企業のOne Medicalは、従業員が長く働きたいと感じる要因を明確にすることを目指しました。 Culture Ampと提携し、エンゲージメント調査を迅速に実施。その結果、社内の変化やプロセス更新に関する情報共有の強化、サポート体制の充実、ウェルビーイング向上が求められていることが明らかになりました。
調査には71%の従業員が参加したものの、「この調査の結果として具体的な行動が取られると信じている」という質問のスコアが最も低い結果に。One MedicalのVP of HRであるダニー・ブリスキン氏は、次のように語ります。
「私たちはこの認識を覆したいのです。従業員に意見を求める以上、そのデータを活用して実際に行動するということを示したい。」
このフィードバックを受け、HRチームは「コミュニケーションの改善」「キャリア開発の強化」「報酬制度の見直し」の3つを重点施策に設定。従業員の意見を反映した具体的なアクションとして、以下の取り組みを発表しました。
- 社内の透明性を高めるため、インターナルコミュニケーションディレクターを新規採用
- 新しいラーニング&ディベロップメント(L&D)プラットフォームへの投資
- 従業員の報酬・福利厚生(トータルリワード)パッケージの見直し
これらの施策は、従業員の声を実際の変革につなげ、エンゲージメントの向上を促進。また、「フィードバックが実際の改善につながる」という企業の姿勢を強く打ち出しました。
Culture Ampを活用し、従業員体験を診断し、改善へと導く
患者の診断には、症状を深く理解することが不可欠ですが、職場の課題に対応する際も同じレベルの配慮が求められます。Culture Ampを活用することで、従業員サーベイを通じて定量・定性データを収集し、貴重なインサイトを得ることが可能になります。これにより、データに基づいた効果的な改善策を導き出すことができます。
さらに、Culture Ampの包括的な従業員エクスペリエンス・プラットフォームを活用することで、企業は従業員が主体的に成長できる環境を整えることができます。具体的には、以下のようなアクションが可能になります。
- 明確な目標設定を支援し、キャリアの方向性を明確にする
- 社内での成長機会を可視化し、長期的なキャリアパスを構築する
- 効果的なフィードバックを促進し、従業員同士のコミュニケーションを活性化する
Culture Ampを活用することで、従業員のエンゲージメントを高め、より働きがいのある組織を実現しましょう。
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ラボラティック株式会社 広報担当