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従業員定着率の計算方法と改善のためのヒント

皆さん、こんにちは。生産性高く、幸せな職場づくりは進んでいますか?ラボラティック株式会社代表の野口麗奈です。今日は、従業員の定着率の計算方法について、大変興味深い記事をお届けします。ぜひ、皆さんの組織運営のヒントになれば幸いです。注:記事の出典は、ラボラティックとパートナ関係にある、世界的な従業員経験プラットフォームを提供するCulture Amp社の「How to calculate (and improve) your employee retention rate」を日本の読者様向けに訳したものです。

目次

  ・従業員定着率は、単なる指標ではない
  ・従業員定着率を計算するためのシンプルな式
  ・実例:自部門の定着率を計算する
  ・「良い」従業員定着率とは?
  ・従業員定着率に影響を与える要因とは?
  ・企業文化
  ・報酬と福利厚生
  ・キャリア開発の機会
  ・ワークライフバランス
  ・マネジメントとリーダーシップ
  ・雇用の安定性
  ・承認と報酬
  ・同僚との関係性
  ・定着率 vs. 離職率:その違いとは
  ・従業員の定着率を高めるための主な戦略
  ・従業員の定着率を長期的な人事戦略に組み込む
    1.定着率の目標をビジネス目標と連動させる
    2.適切なツールを導入する
    3.継続的にモニタリングし、必要に応じて調整する
  ・優秀な人材が定着するために
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  ・関連リンク

「測れないものは改善できない」という言葉があります。そして、重要な指標の中でも、多くのリーダーが真っ先に挙げるのが「従業員の定着率」です。

最近のCEOを対象にした調査によると、「従業員の定着とエンゲージメントの向上」が2024年の最優先事項として挙げられました。しかし、従業員の定着率を改善するには、まずは自社の現状を正しく把握する必要があります。

本ガイドでは、離職への対策を実行に移すために必要な知識をお伝えします。以下の内容をカバーしています。

  • 従業員定着率の計算方法
  • なぜこの指標を追跡することが重要なのか
  • 従業員が長く働きたいと思う職場をつくるための戦略

従業員定着率は、単なる指標ではない

まずはシンプルな定義から始めましょう。

従業員定着率とは、ある一定期間において、会社に在籍し続けた従業員の割合を指します。

この指標は、ビジネスに大きな影響を及ぼします。従業員の離職と採用・育成には非常に高いコストがかかるとされており、研究によると、その費用は離職した従業員の年収の0.5〜2倍にもなると言われています。

しかし、コスト面だけが問題ではありません。継続的な離職が起きているということは、貴重な経験や組織の知識資産が失われているということでもあります。一度時間と資金を投じて育てた人材が、次々に離れていく状況は、企業にとって大きな損失です。

定着率は重要です。しかし、これは単なるレポート上の数字ではありません。社員の仕事満足度やエンゲージメント、そして企業文化の健全性を映し出す、正直で信頼できる指標なのです。

定着率が低いということは、リーダーシップの問題から、キャリア開発の機会不足まで、さまざまな課題の兆候である可能性があります。だからこそ、定着率は必ず文脈とともに読み解くことが必要です。自社に今、戦略的な改善が求められていることを示す、最も明確なサインのひとつかもしれません。

従業員定着率を計算するためのシンプルな式

従業員定着率を計算する準備ができたら、まずは対象とする期間を明確にしましょう。一般的には、定着率は年単位で算出し、離職率はより頻繁にチェックすることが推奨されます。

対象期間が決まったら、次の2つの質問に答えてください。

  • 定義した期間の開始時点で在籍していた従業員数は?(これは「元々の従業員数」です)
  • 同じ期間の終了時点で、そのうち在籍し続けている従業員数は?(これは「残った従業員数」です)

このとき、期間中に新たに雇用された従業員は含めないようにしてください。今回の目的は「定着率」を測定することなので、新規採用者を含めてしまうと正確な数値が得られません。

必要な数値がそろったら、以下のシンプルな計算式に当てはめてみましょう。

画像
Culture Amp社のデータより

従業員定着率の公式(定義した期間内における)
(定義した期間の最後にいた従業員数/定義した期間の最初にいた従業員数)X100 = 定着率

実例:自部門の定着率を計算する

たとえば、過去1年間の自部門の定着率を確認したいとしましょう。人事データを確認し、次の情報を得ました。

  • 年初の時点で、あなたの部門には1,347名の従業員が在籍していました。
  • 年末時点では、部門の従業員数は1,294名です。
  • この1,294名の中には27名の新規採用者が含まれているため、彼らを計算から除外します。すると、残った従業員数は1,267名となります。

この場合の定着率は、次のように計算できます。

(1,267名 ÷ 1,347名)× 100 = 94%の従業員定着率

「良い」従業員定着率とは?

従業員定着率を算出した後に自然と浮かぶ疑問は、「この定着率は良いのだろうか?」ということです。

一般的に言えば、90%以上の定着率はかなり良いとされています。ただし、常に自社の状況を考慮することが重要です。たとえば、自社がテクノロジー企業である場合、小売業のブランドと定着率を比較してもあまり参考にはなりません。

定着率は部門、業界、地域などによって異なるほか、マクロ経済の状況によっても変動します。

従業員定着率に影響を与える要因とは?

 従業員定着にはさまざまな要因が関係しています。代表的なものは以下の通りです。

企業文化

企業文化は、定着や離職を左右する非常に重要な要素のひとつです。実際、2022年に人々が職を辞めた最も大きな理由は「有害な企業文化」であり、低賃金やマネジメントの質の低さ、ワークライフバランスの欠如を上回っていました。MITの別の調査でも、有害な文化は報酬よりも10.4倍も高い確率で離職につながることが示されています。

報酬と福利厚生

給与は定着に最も大きな影響を与える要素ではないかもしれませんが、依然として重要です。実際、調査によると73%の従業員が、より高い給与を求めて転職を検討すると回答しています。自社が定着に課題を抱えている場合は、給与水準が市場に対して適切か、報酬制度に問題がないかを見直すことが重要です。

キャリア開発の機会

Culture Ampの調査によれば、キャリアの成長や学習機会の欠如は、在籍年数に関係なく、従業員が会社に入る/辞める理由の第1位に挙げられています。別の調査でも、従業員は「高い給与」よりも「学習と成長の機会」を重視する傾向があることが明らかになっています。

実際、46%の従業員がマネージャーからキャリアのサポートを受けていないと感じており、25%の従業員がその理由で6ヶ月以内に辞める可能性があると回答しています。

ワークライフバランス

従業員は、仕事と私生活のバランスがとれたポジティブな職場環境をますます重視しています。特にパンデミック以降は、「仕事を生活の中でどう位置づけるか」について明確な考えを持つ人が増えており、ライフスタイルや価値観と合わない働き方を受け入れにくくなっています。2023年の調査でも、「ワークライフバランスの悪さ」が人々が退職を選ぶ最大の理由として挙げられています。

マネジメントとリーダーシップ

「人は仕事を辞めるのではなく、上司を辞める」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。この表現はやや誇張かもしれませんが、マネージャーは従業員のモチベーションや定着意欲に影響を与えます。Culture Ampの調査でも、マネージャーの存在が離職意図に影響を与えることはあるものの、それが決定的な要因になるとは限らないと示されています。

雇用の安定性

リストラや組織再編が続いたり、先行きが不透明だと、従業員は不安を感じやすくなります。研究によると、「雇用の不安感」は従業員のエンゲージメントを下げることがわかっています。エンゲージメントが下がれば、長く働こうという意欲も低下します。

承認と報酬

定期的で誠実な称賛や感謝の表現は、従業員体験において重要であり、仕事の満足度やモチベーション、会社に対する認識に直接的な影響を与えます。Gallupの調査によれば、適切に認められている従業員は、2年後の離職率が45%低いことがわかっています。

同僚との関係性

同僚とのつながりが深い従業員は、より強い「所属感」を持ちやすくなります。そして、このような「自分はこの職場の一員だ」という感覚があると、従業員は会社を辞めにくくなります。

定着率 vs. 離職率:その違いとは

従業員の定着率を改善しようとするとき、似たような用語として「従業員の離職率」が出てくるかもしれません。これらの指標は関連していますが、決定的な違いがあります。それは、定着率は「会社に残った従業員の割合」を示すのに対して、離職率は「会社を辞めた従業員の割合」を示すという点です。

一見すると単純な違いのように思えますが、もうひとつ重要な違いがあります。それは、測定する期間(タイムフレーム)です。

定着率は一般的に年間で測定される長期的な指標ですが、離職率は月次など、より短いスパンで頻繁に測定されることが多いです。
どちらの指標も、従業員戦略を策定するうえで重要な役割を果たします。なぜなら、どちらも従業員体験の全体像を示す重要なシグナルだからです。
定着率が高ければ、従業員の満足度やエンゲージメントが高いことを示唆し、一方で離職率が高い場合は、従業員の不満や組織内の構造的な問題がある可能性を示しています。

従業員の定着率を高めるための主な戦略

従業員の定着率にはさまざまな要因が影響するため、改善のために取れるアプローチは無数に存在します。ここでは、より多くの従業員が長く働き続けたくなるような環境をつくるために実施できる、いくつかの戦略をご紹介します。

  • 競争力のある報酬パッケージを提供することを徹底する:給与体系を見直し、報酬が市場水準に合っているか、従業員の価値や業績を適切に反映しているかを確認しましょう。
  • キャリア成長の機会を提供する:学習や能力開発のリソースは用意されていますか?昇進やキャリアアップに向けた明確な道筋はありますか?メンター制度はありますか?マネジメント層からのサポートは十分ですか?もしこれらが不十分であれば、改善することで「単なる職場」ではなく「意味あるキャリアを築ける場所」であると示すことができます。
  • 頻繁かつ誠実な称賛を行う:「よくやった」という一言や、ちょっとした感謝の気持ちが、大きな効果をもたらすことがあります。従業員が貢献を認められ、大切にされていると実感できるように、さまざまな従業員表彰のアイデアを試してみましょう。
  • 従業員のウェルビーイングに投資する:ウェルビーイングは従業員体験の中核です。メンタルヘルス支援やウェルネスプログラム、柔軟な勤務時間、リモートワークの選択肢、追加の有給休暇など、ワークライフバランスを支える制度に投資することで、定着率を向上させることができます。
  • 率直で誠実なコミュニケーションを徹底する:従業員エンゲージメントには、透明性のあるコミュニケーションが不可欠です。4人に3人以上の従業員が「もっと透明性が欲しい」と感じており、3人に1人が「成長や昇進に関する情報が不透明だったために離職した」と回答しています。従業員とのコミュニケーションは、積極的かつ率直に行い、マネージャーにも同様の訓練を行いましょう。
  • マネージャーとチームの関係を強化する:マネージャーがより良いリーダーになれるよう、トレーニングやスキルアップの機会を提供しましょう。たとえば、1on1ミーティングの質を高める方法、燃え尽き症候群への対応、キャリア開発の支援など、実践的なマネジメントスキルの向上が求められます。

上記のいずれの戦略も、定着率の改善に寄与します。しかし、最も効果的に従業員のコミットメントを高める方法は、意外にもシンプルです。従業員に「何を望んでいるのか」を尋ねることです。
従業員に定期的にフィードバックの機会を与え、その声にきちんと対応すれば、彼らのニーズや期待に合った職場づくりが可能になります。推測ではなく、事実に基づいて従業員の満足度を高めていくことができるのです。

従業員の定着率を長期的な人事戦略に組み込む

従業員の定着率は、単なる数字として扱うべきではありません。それは、長期的な人事戦略の基盤となる要素として捉えるべきものです。このような視点を持つことで、定着率は、従業員体験を継続的に改善するために、経営層が常に意識し、責任を持って取り組むべき指標となります。そして、組織を「人が長く働きたくなる場所」へと変えていくことができるのです。
以下は、定着率を単なる孤立した指標ではなく、戦略の中核に据えるための方法です。

1. 定着率の目標をビジネス目標と連動させる

もちろん、優秀な人材には長く働いてほしいと思うものです。しかし、他の人材関連の目標と同様に、定着に関する目標も、より大きなビジネス上の目的に沿ったものであるべきです。そうすることで、長期的な成功を支えるための、的確な目標設定と施策の立案が可能になります。
たとえば、あなたの組織がイノベーションや新市場への進出に注力している場合、それを推進できる高スキルな人材の定着を重視する戦略が求められるでしょう。
つまり、定着戦略は「すべての人をつなぎとめる」ためのものではなく、「必要な人を維持する」ためのものであるべきです。

2. 適切なツールを導入する

定着率の算出は簡単な計算でできますが、定着を管理し、改善するには、より洗練されたアプローチが必要です。従業員体験や満足度を継続的に測定・改善するための適切なツールが不可欠です。
従業員エンゲージメントプラットフォーム、パフォーマンスマネジメントシステム、フィードバックツールなどは、主要な人事指標を追跡し、リアルタイムで従業員の声に対応するうえで非常に有効です。

3. 継続的にモニタリングし、必要に応じて調整する

定着は一度対処すれば終わるものではなく、継続的な取り組みが必要です。少なくとも年に一度は定着率を確認し、退職者には出口面談を行い、在職中の従業員からも定期的にフィードバックを得て、戦略が効果を上げているか、どこを調整すべきかを把握しましょう。

柔軟に対応することで、あなたの定着施策は常に時代に即し、最大限の効果を発揮できるようになります。

優秀な人材が定着するために

従業員の離職はコストがかかり、業務にも混乱をもたらすため、多くの経営者が「人材の定着」に注目するのは当然のことです。
そして朗報なのは、「従業員が組織に残りたいと思うようにすること」は、決して謎めいたことではないという点です。従業員が離職するかどうかを決める要因は多々ありますが、それぞれが、企業側が何らかのアクションを起こせるチャンスでもあるのです。

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