
建設的なフィードバックの力

皆さん、こんにちは。生産性高く、幸せな職場づくりは進んでいますか?ラボラティック株式会社代表の野口麗奈です。今日は、普段何気なく使っている「フィードバック」について、大変興味深い記事をお届けします。ぜひ、皆さんの組織運営のヒントになれば幸いです。注:記事の出典は、ラボラティックとパートナ関係にある、世界的な従業員経験プラットフォームを提供するCulture Amp社の「The power of giving constructive feedback」を日本の読者様向けに訳したものです。
目次
- 建設的なフィードバックとは?
- 建設的フィードバックを行うために必要な4つの要素
- 1. タイミング
- 2. グロース・マインドセット(成長思考)
- 3. モチベーションを高める言い回し
- 4. ボディランゲージ(非言語コミュニケーション)
- 建設的なフィードバックで従業員のパフォーマンスを高める
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継続的な学びと成長は、従業員の定着やエンゲージメントを高める最も重要な要素のひとつです。しかし、それを実現するには、改善と成果につながる「継続的なフィードバック文化」が組織に根づいていることが前提となります。
多くのマネージャーはポジティブなフィードバックを与えることには抵抗がありませんが、ネガティブなフィードバックについては気まずさや不快感から避けてしまう傾向があります。これは非常にもったいないことです。なぜなら、フィードバックは「罰」ではなく、従業員に自分の行動やその影響を気づかせ、成長の機会を与えるための手段だからです。
ただし、伝え方によっては、相手が防御的になったり、フィードバックを受け入れられなくなったりするリスクがあります。そのため、建設的なフィードバックのスキルを磨くことは、従業員の成長を支援するうえで非常に重要です。
建設的なフィードバックは、未来志向で、段階的な改善を促しながら、従業員のモチベーションを高めるアプローチです。ここでは、従業員のパフォーマンス向上や「学び続ける文化」を育むために、どのように建設的なフィードバックを届ければよいかをご紹介します。
建設的なフィードバックとは?
フィードバックはひとつの「スペクトラム(連続体)」として捉えることができます。片側の極には「ネガティブ・フィードバック」があり、これは主に批判や罰則、ある行動をやめさせる目的で用いられます。反対側の極には「ポジティブ・フィードバック」があり、賞賛や報酬を通じて好ましい行動を強化するためのものです。
ポジティブ/ネガティブのいずれも、既存の行動を維持または抑制するには有効ですが、行動変容を促すという観点では必ずしも十分ではありません。
その中間に位置するのが「建設的フィードバック(constructive feedback)」です。これは、行動を正し、鼓舞し、新たな方向に導くことを目的としています。性質としては、是正的かつ未来志向で、従業員のモチベーションを引き出すものです。
建設的フィードバックは、ある行動が良かった/問題があったという点だけでなく、その結果としてどんな影響(意図的あるいは非意図的)があったのかを伝えることが特徴です。
フィードバックの例:
あなたの部下が素晴らしいプレゼンテーションを行ったとします。話す内容を覚えるためにメモカードを使い、鋭い指摘も盛り込まれていました。マネージャーとして、彼のプレゼンスキルをさらに高めるための建設的フィードバックを与えたいと考えます。
次の1on1ミーティングで、準備が万全だったことや、上層部にも好印象を与えたことをまず称賛します。そのうえで、彼がプレゼンテーションスキルを磨こうとしていることを踏まえ、改善の提案をします。「メモカードに頼りすぎると、聴衆との間に物理的な障壁ができてしまい、アイコンタクトが取りづらくなる。そのため、次回はノートを使わず、聴衆の目を見て話す練習をしてみてはどうか」と伝えるのです。
このようなフィードバックでは、良かった点を認めつつ、明確な成長の方向性を示しています。建設的フィードバックは、従業員に「あなたの成長に関心がある」と伝える手段であり、優秀な人材のモチベーションを高める強力なツールになります。
建設的フィードバックを行うために必要な4つの要素
フィードバックをうまく伝えるには、スキルと高い感情的知性が求められます。しかし、適切なトレーニングを行えば、誰でも建設的なフィードバックを提供できるようになります。
ここでは、パフォーマンスに関する対話を効果的に導くための4つの重要な要素をご紹介します。
1. タイミング
フィードバックには「適切なタイミング」があります。自分の経験を振り返ってみてください。感情が高ぶった会議の直後にフィードバックを受けるのと、数時間後の1on1で落ち着いて受けるのとでは、どちらが受け入れやすいでしょうか?
重要なのは、できるだけ早くフィードバックを伝えることですが、相手のメンタル状態が落ち着いているタイミングを選ぶことで、より効果的に伝えられます。
また、定期的にフィードバックを行うことも大切です。そうすれば、従業員は突然の人事評価や面談で驚くことがなくなり、早期に自己修正することができます。逆に、フィードバックを長く放置してしまうと、従業員は自分の問題点に気づかないまま時間が過ぎてしまいます。
2. グロース・マインドセット(成長思考)
偏った視点からのフィードバックは、職場の信頼関係を損なう可能性があります。マネージャーは、事実を正確に把握し、先入観を持たず、成長思考(Growth Mindset)を持ってフィードバックに臨むことが求められます。
アメリカの心理学者キャロル・ドゥエック氏が提唱した「グロース・マインドセット」とは、「知性や性格は固定されたものではなく、努力次第で成長できる」という考え方です。
マネージャーがこの思考を持っていれば、チームメンバーの成長可能性を信じ、育成に前向きになります。また、従業員側がこの思考を持てば、フィードバックを前向きに捉え、困難にも立ち向かう力が高まります。
3. モチベーションを高める言い回し
フィードバックで重要なのは、「何を言うか」だけでなく「どう言うか」です。建設的フィードバックは、好奇心とオープンマインドをもって伝える必要があります。否定的・命令的・閉ざされた表現は、相手を疎外してしまう可能性があります。
最も簡単に言葉の印象を和らげ、対話を促す方法は、「Did(~した?)」「Is(~なの?)」「Will(~する?)」で始まる質問を、「Who(誰が)」「What(何を)」「How(どうやって)」といったオープンクエスチョンに置き換えることです。これにより、一方通行ではない対話が生まれ、従業員は自分の意見を言いやすくなり、上司もその背景や考え方を理解しやすくなります。
そして、伝えたいフィードバックの内容が明確になったら、次は具体的かつ実行可能な形で伝えることが大切です。以下はシンプルなフレーズの例です。
私からのフィードバックは「〇〇という行動をやめてほしい」、なぜなら「△△という結果になってしまうから」です。
例:会議中のパソコン使用はやめてほしいです。周囲に関心がない印象を与え、他の参加者の集中力もそがれてしまいます。
一見シンプルな言い方ですが、相手に「何を変えてほしいか」と「その理由」をしっかり伝えることができます。特に、相手が自覚していない行動がテーマになる場合は、安心して受け止められるような工夫が必要です。
その一つの方法が、「やめてほしい行動」を伝えるのではなく、「始めてほしい行動」に置き換えることです。
私からの提案は「〇〇を始めてみては?」、なぜなら「△△という成果につながるから」です。
例:会議中にメモを取ってみてはどうですか?依頼されたタスクを後で忘れずに対応しやすくなると思います。
このように、ポジティブな方向性での表現は、相手が防御的になりにくく、前向きにフィードバックを受け取ってもらえる可能性が高まります。
4. ボディランゲージ(非言語コミュニケーション)
私たちのコミュニケーションにおいて、言葉の意味が伝わる割合はわずか7%にすぎません。残りは、38%が「声のトーン」、そして55%が「表情や姿勢などのボディランゲージ」によって伝わっていると言われています。
つまり、どれだけ言葉を慎重に選んだとしても、無意識のうちに発している非言語的なサインが、相手に誤解や不安を与えてしまう可能性があります。
部下や同僚にフィードバックを伝える際は、「何を話すか」だけでなく、「どう見せるか」にも注意しましょう。相手が安心して受け止められる雰囲気をつくるためには、以下のようなポイントが効果的です。
- 腕や肩の力を抜く
- 優しいアイコンタクトをとる
- 柔らかい声で話す
- 穏やかな表情で微笑む
こうしたさりげない仕草が、フィードバックの場を前向きで安心できるものにしてくれます。
建設的なフィードバックで従業員のパフォーマンスを高める
建設的フィードバックは、従業員の気づきと行動変容を促し、結果的にビジネス成果の向上にも貢献します。上司と部下の信頼関係を深め、エンゲージメントや定着率(リテンション)を高める鍵にもなり得るのです。
だからこそ、マネージャーには「日常的に」「継続的に」フィードバックを行う習慣を身につけてもらうことが大切です。
より詳しく学びたい方は、Culture Ampのオンデマンドウェビナー「The power of negative feedback(ネガティブ・フィードバックの力)ー英語」もぜひご覧ください。ネガティブなフィードバックが持つ課題や、それを乗り越えて成果につなげた企業事例をご紹介しています。
《この記事に関するお問い合わせ》
ラボラティック株式会社 広報担当