
従業員エンゲージメント調査の結果を活用する4つの革新的な方法

皆さん、こんにちは。生産性高く、幸せな職場づくりは進んでいますか?ラボラティック株式会社代表の野口麗奈です。今日は、エンゲージメント・サーベイの調査結果を活用する方法について、大変興味深い記事をお届けします。ぜひ、皆さんの組織運営のヒントになれば幸いです。注:記事の出典は、ラボラティックとパートナ関係にある、世界的な従業員経験プラットフォームを提供するCulture Amp社の「4 innovative ways to use employee engagement survey results」を日本の読者様向けに訳したものです。
目次
- なぜフィードバックを他のプロセスに組み込むべきなのか?
- 1. 年間計画を立てる
- 2. チーム・オフサイト
- 3. プログラムの評価
- 4. 採用プロセス
- 従業員のフィードバックをどのように活用するか?
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エンゲージメント・サーベイの流れについては、多くの方がご存じかもしれません。一般的なプロセスは以下のようになります。
1️⃣ アンケートを作成する
2️⃣ アンケートを周知し、実施する
3️⃣ 結果を分析し、共有する
4️⃣ 具体的なアクションを起こす
そして、一定の進展を感じたら、またこのプロセスを繰り返します。このサイクルを回すことで、目的意識のある企業文化を築くことができる というのが、私たちの見解です。
しかし、エンゲージメント調査などのフィードバックプロセスが、より大きなビジネス目標や他の人事施策と乖離してしまう と感じることもあるかもしれません。
そこで今回は、従業員のフィードバック(特にエンゲージメント調査の結果)を、他の業務プロセスに組み込み、より効率的かつ効果的に活用する方法 をいくつかご紹介します。
なぜフィードバックを他のプロセスに組み込むべきなのか?
従業員のフィードバックデータを他の業務プロセスに統合することは、フィードバックの有用性を新たなステークホルダーに示す絶好の機会となります。これにより、フィードバックプログラムの信頼性が向上し、組織内での認知度や活用価値が高まる ことが期待できます。また、日常的に従業員フィードバックに触れる機会が少ない人にとっても、データの可視性が向上し、フィードバックの意義や活用方法を理解するきっかけになります。彼らの中には、このデータにアクセスできること自体を知らなかったり、業務とどのように関連するのかを認識していなかったりする 人もいるかもしれません。
新たな調査を実施することも選択肢の一つですが、「調査疲れ」を懸念するよりも、すでにあるデータを最大限活用する方法を考えることが重要 です。(なお、私たちの調査では、フィードバックをもとに具体的なアクションを取っていれば、「調査疲れ」は大きな問題にはならないことが分かっています。)
今あるデータを活用することで、より効果的で実用的なフィードバックの仕組みを構築することができるのです。
1. 年間計画を立てる
組織のニーズに柔軟に対応することが、エンゲージメント調査の実施タイミングを決める最良の方法です。そのため、必ずしも年1回の実施にこだわる必要はありません。しかし、従業員のフィードバックを収集するタイミングが年間計画と一致することもあります。
このような場合、アラインメント(組織との整合性)、イネーブルメント(業務遂行のしやすさ)、会社への信頼感に関する従業員の認識を、年間計画の策定に活用すると効果的です。以下では、年間計画のプロセスに従業員のフィードバックデータを活用する方法について具体例を紹介します。ベンチマークスコアが記載されている場合、それは Culture Amp の調査において該当の質問に「同意する」または「強く同意する」と回答した割合の平均値です。
仕事量のデータを活用し、人員計画の見直しを行う
質問例:「一般的に、自分の仕事量は自分の役割に対して妥当だと思う。」
この項目のベンチマークスコアは 65~80% と幅があります。重要なのは、全社の平均値と比較した際に、特定の職種やチームのスコアが大幅に低くなっていないかを確認することです。
スコアが低い役割やチームがある場合、それは人員が不足している可能性を示しているため、来年度のリソース計画において適切な調整が必要となるでしょう。
コミットメントデータを活用し、離職リスクを予測する
質問例:「2年後も[会社]で働いていると思う。」
この項目のベンチマークスコアは 60~65% です。ベンチマークを下回る場合、翌年の離職率が高くなる可能性があるため、年間計画に人員補充やリテンション施策を盛り込むことが求められます。
また、職種や属性ごとのスコアの違いにも着目することで、特定の部門や職種で離職の可能性が高まっていないかを把握し、適切な対策を講じることができます。
OKRや目標設定プロセスの見直しに活用する
質問例:「自分の仕事が[会社]の目標にどのように貢献しているか知っている」
この項目のベンチマークスコアは 85~90% です。スコアが低い場合、目標設定のプロセスを見直し、組織目標と個々の業務がどのように結びつくかを明確にする必要があります。
また、チームごとのスコアを比較することで、特定の部門で目標の認識にズレが生じているかどうかを確認し、必要な調整を行うことが重要です。
質問例:「[会社]はリソース(資金、人材、労力)を効果的に企業目標に投入している」
この項目のベンチマークスコアは 50~70% と、業界によってばらつきがあります。スコアが低い場合、経営陣と従業員の間でリソース配分に関する認識のズレが生じている可能性があります。年間計画の策定時にリソース配分の方針を明確にし、透明性のある意思決定プロセスを確立することが求められます。
2. チーム・オフサイト
フィードバックを組織のミクロレベルで活用する方法の一つとして、チームオフサイトのアジェンダやワークショップの設計に調査結果を活用する ことが挙げられます。年間計画に関連する内容はチームにも適用できますが、チーム単位でより効果的なアプローチもあります。
仕事量の分担
チーム内の仕事量の分担に関するスコアが他のチームと比べて低い場合、「インタラクションマップ」 を活用することで、各役割がどのように連携し、どこにボトルネックが生じているのかを可視化することができます。
質問例:「私の職場では、仕事量は公平に分担されている」
この項目のベンチマークは約55~65%です。スコアが低い場合、業務分担に関する課題を明確にし、改善策を検討することが求められます。
役割の明確さ
役割の明確さに関するスコアが低い場合、各メンバーに「自分の仕事内容」を書き出してもらい、グループで共有し、認識のズレを議論する ことで、役割の理解を深めることができます。
質問例:「自分の役割で成功するために何をすべきか分かっている。」
この項目のベンチマークは約80~90%と高めです。スコアが低い場合、役割分担や責任範囲の認識にズレがある可能性があり、それを解消するためのディスカッションが有効です。
チームの結束力
チームの結束力に関するスコアが低い場合、チームメンバー同士が個人的なレベルでお互いを理解できるようなチームビルディングの演習 を取り入れることが効果的です。Culture Ampでは、「ユーザーマニュアル」 を作成する手法が有効であると考えています。
質問例:「自分はチームの一員だと思う。」
この項目のベンチマークは80~85%と高めです。スコアが低い場合、チーム内のつながりを深める施策が求められます。
3. プログラムの評価
人事部門では、複数のプログラムを同時に運用していることが多いでしょう。従業員のフィードバックデータは、プログラムの効果測定を完全に代替するものではありませんが、プログラムが期待通りの成果を上げているかどうかを迅速に確認する手段として有効です。
この評価を行う方法の一つとして、プログラムの「参加状況」や「評価」 をデモグラフィック(属性データ)やフィルタとして設定し、それに基づいて結果を分析する方法があります。以下のような比較を行うことで、プログラムの効果をより正確に把握することができます。
- マネージャー研修プログラムを修了したマネージャーの部下のマネジメント項目の回答を比較する。
- オンボーディングの経験が肯定的または否定的だった従業員のエネーブルメント(業務遂行のしやすさ)に関する回答を比較する。
- ボランティアプログラムに参加している従業員の社会的責任に関する認識を比較する。
- 最近研修を受講した、または360フィードバックを受けた従業員の学習・能力開発に関する認識を比較する。
たとえば、Culture Amp のデータでは、360フィードバックを受けた従業員の方がエンゲージメントが高い ことが示されています。こうした分析を行うことで、各プログラムが組織全体の成果や従業員のエンゲージメント向上にどの程度寄与しているかを把握し、より効果的な施策へとつなげることができます。

4. 採用プロセス
採用は、人事部門(および全従業員)が担う最も重要なプロセスの一つです。従業員フィードバックはプロセスのさまざまなステップで活用できますが、まずは採用の初期段階であるリクルーティングから始めるのがよいでしょう。
選考プロセスにおいて、従業員のフィードバックデータは、候補者に現実的な職場環境を伝えるために活用できます。例えば、従業員が「当社では健全なワーク・ライフ・ブレンドを維持するのが難しい」と感じていることがあるか、あるいは「革新的なアプローチよりも確立された手法が好まれる傾向があるか」などの情報を候補者に提供することで、入社後のミスマッチを防ぎ、候補者が自身に適した職場かどうかを判断しやすくなります。
また、入社時のプログラムに関するフィードバックを収集するために、オンボーディングサーベイを最適化して活用することができます。Culture Amp では、オンボーディングとフィードバックの収集に段階的なアプローチを採用しています。特定のオンボーディングサーベイがない場合でも、エンゲージメントサーベイで収集された「イネーブルメント(業務遂行のしやすさ)」に関するデータを活用することで、特定の役割におけるオンボーディングプログラムの改善が必要な箇所を特定することができます。
従業員のフィードバックをどのように活用するか?
どのようなフィードバックデータにアクセスできるか、また、どのようなプログラムを導入しているかによって、上記のアイデアのどれを実行できるかは異なります。私たちのアイデアが、従業員フィードバックを他の人事施策(そしてビジネス全体の取り組み)にどのように組み込むかについて、あなた自身のアイデアを促進するきっかけになればと思います。
データを他のプロセスの指針として活用することで、新たな価値を生み出すことができます。従業員のフィードバックを新しい方法で活用する場合は、そのことを従業員に伝えることを忘れないでください。
従業員のフィードバックがどのように活用されているかを明確に示すことで、従業員は「自分の声が届いている」と感じることができ、フィードバックの継続につながります。
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ラボラティック株式会社 広報担当