
従業員エンゲージメントのベンチマーク活用ガイド

皆さん、こんにちは。生産性高く、幸せな職場づくりは進んでいますか?ラボラティック株式会社代表の野口麗奈です。今日は、従業員エンゲージメント調査のベンチマークを活用する方法について、大変興味深い記事をお届けします。ぜひ、皆さんの組織運営のヒントになれば幸いです。注:記事の出典は、ラボラティックとパートナ関係にある、世界的な従業員経験プラットフォームを提供するCulture Amp社の「A guide to using employee engagement benchmarks」を日本の読者様向けに訳したものです。
目次
- 従業員エンゲージメント調査のベンチマーク活用のヒント
- 1. 自社の人材プールを参考にしてベンチマークを選ぶ
- 2. ベンチマーク達成自体を目標にすべきではない
- 3. ベンチマークの多様性は規模よりも重要
- カルチャーアンプのベンチマークの特徴は?
- ベンチマークの最適な規模に関する科学的根拠
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従業員エンゲージメントのベンチマークは、組織の現状を把握する上で非常に有用です。たとえば、特定のアンケート項目で低いスコアが出た場合、関連するベンチマークと比較することで、そのスコアが業界標準であるかどうかを確認できます。これにより、不必要な不安に陥ることを防げます。ただし、業界平均との微小な乖離に過度にこだわるのは逆効果です。
ベンチマークはあくまで参考情報であり、それを達成すること自体が最終目標ではありません。むしろ、ビジネスや従業員にとって本当に重要な領域で、競争優位を獲得するために、ベンチマークを超えてさらなる成長を目指す必要があります。
以下は、これからベンチマークの活用を始める組織に向けて、よくお伝えするヒントです。
従業員エンゲージメント調査のベンチマーク活用のヒント
1. 自社の人材プールを参考にしてベンチマークを選ぶ
多くの人は、業界固有のベンチマークだけに注目しがちですが、これはアクセスできるデータのプールが限定され、ベンチマークの信頼性を損なう可能性があります。たとえば、従業員の出身業界や経歴を把握し、その業界を基準にベンチマークを設定する方が効果的な場合が多いのです。
たとえば、私たちは最近、ある保険会社と協力した際、経営陣や取締役会レベルで、非常に狭い保険業界に基づくベンチマークに固執している現状を見ました。しかし、その会社は同時にデジタルトランスフォーメーションに取り組み、ハイテク企業からの優秀な人材獲得を目指していました。そこで、過去10人の評価が高い従業員の退職先を調査したところ、10人中8人が他の保険会社ではなく、ハイテク企業や法律事務所へ転職していることが分かりました。つまり、従業員が転職先として選んでいる業界をベンチマークにすることで、改善すべき適切な分野を見極めることができるのです。
さらに、ベンチマークを選ぶ際には、将来的にどこから採用したいかという視点を持つことも重要です。たとえば、多くの銀行はデジタル化を進める中で、従来の金融機関からではなく、テクノロジーに精通した人材を求めています。こうした場合、自社の競争相手は金融機関ではなくテック企業であるため、ベンチマークの対象もテック業界とすべきなのです。
2. ベンチマーク達成自体を目標にすべきではない
人々が陥りがちな一般的な間違いは、ベンチマークをただ達成しようと固執することです。たとえば、現在70%の状態で72%を目指すことが、従業員にとってその項目がそれほど重要でなければ、必ずしも意味があるわけではありません。もっと大切なのは、データそのものと、その背景にある関係性を見極め、従業員にとって本当に重要な要素に注力することです。
ベンチマークは、組織戦略をチェックするための指標であり、反応的で注意をそらす目標を決めるためのものではありません。まずは自社の組織戦略を見直し、従業員にとって何が価値あるのかを考え、その視点を基に目標を設定すべきです。たとえば、従業員にとってワークライフバランスよりも柔軟性が重視される場合、ワークライフバランスを62%から65%に引き上げることにリソースを投じるのは効果的ではありません。しかし、もし現在の戦略が革新的な製品やサービスの構築に重きを置いているなら、その分野では製品チームが平均以上の成果を出すことが求められるでしょう。
私たちが本当に推奨するのは、企業が以下のような分野で向上心を持つことです:
- 従業員にとって本当に重要な領域
- 自社の競争優位性を支えている、または支えると信じられている領域
- 従業員が理想とする職場環境を実現するための領域
ベンチマークの数値に固執するのではなく、これらの重要な分野に注力することで、たとえすでに業界の中央値以上であっても、さらなる大きな利益を得ることができるでしょう。
3. ベンチマークの多様性は規模よりも重要
ベンチマークに含まれる人数が多いほど良いという考えは、よくある誤解です。実際には、絶対数よりも、どれだけ多様な企業を含めているかが重要です。似たような会社ばかりだと、世の中に存在するさまざまな組織文化を反映するサンプルとはなりません。
私たちは、ベンチマークが安定するために必要な企業数をブートストラップサンプリングで検証したところ、最大で約20社程度で十分であることが分かりました。つまり、20社あれば、それ以上増やしてもベンチマーク自体はほとんど変わらないのです。理想的には、20社、2万人分のデータを基にベンチマークを設定することをお勧めします。それ以上のデータ収集は、メリットがあまりないと言えるでしょう。
ベンチマークは、あなたのデータを理解するための有用な文脈を提供してくれ、低いスコアに不安を感じるのを防ぐ助けとなります。しかしながら、ベンチマークにとらわれすぎると、組織や従業員にとって本当に戦略的に重要な要素を見落とし、単に業界の中間値を目指すだけになってしまいます。もし、従業員や自社の戦略にとって本当に重要な領域があるなら、ベンチマークとの比較に縛られることなく、高い目標を掲げる価値があるのです。
カルチャーアンプのベンチマークの特徴は?
カルチャーアンププラットフォームでは、業界をリードするベンチマークにアクセスできます。Culture Amp社のベンチマークがユニークな理由は、以下の点にあります。
- カルチャーアンプベンチマークは、平均回答率80%以上の実際の企業データを使用しています。
- 実在する最新の企業データを使用しているため、カルチャーアンプのアンケートの設問は定期的に検証されています。
- カルチャーアンプベンチマークは、世界で最も業績が良く、カルチャーを重視する企業を反映しています。
- カルチャーアンプベンチマークは最新のもので、過去12ヶ月間のデータのみを使用しています。
- 業種別ベンチマークには、最低20社、20,000人が含まれます。
- 地域別ベンチマークには、50社以上、1万人以上を含みます。
- 機能別ベンチマークには、最低50社、5,000人が含まれます。
ベンチマークの最適な規模に関する科学的根拠
数十万人規模のベンチマークの話をよく耳にしますが、実際には、そのデータはほんの一握りの大企業から集められているか、あるいは、同じ企業のデータが何年にもわたって使用されているケースが多いのです。
では、ベンチマークの最適な規模とはどれくらいでしょうか? 考慮すべき点は大きく2つあります。ひとつは「関連性」、もうひとつは「安定性」です。
まず、ベンチマークのサンプルが自社と比較すべき対象となる多様な組織文化や職場体験を反映している限り、最も重要なのは安定性です。私たちは自社の大規模なデータセットを用いて何百万ものブートストラップサンプルを実施し、約20~25社程度の企業データが揃えば、スコアのばらつきが安定し始めることを確認しました(下図参照)。

このポイントを超えて企業数や人数を追加しても、ベンチマークのスコアに大きな変化は見られません。そこで、私たちは最低でも20社、2万人分のデータを含むベンチマークを推奨しています。
また、関連性については、比較対象として自社が直面している、従業員が転職先として選ぶ可能性のあるさまざまな文化や職場体験を念頭に置くことが重要です。もし、何百万人分のデータが集まっていたとしても、それがほんの数社だけを代表していたり、自社と関連性が薄いものであれば、意味がありません。
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ラボラティック株式会社 広報担当