
マネジャーの体験:その光と影、そして意外な一面とは

皆さん、こんにちは。生産性高く、幸せな職場づくりは進んでいますか?ラボラティック株式会社代表の野口麗奈です。今日は、組織におけるマネージャー体験について、大変興味深い記事をお届けします。ぜひ、皆さんの組織運営のヒントになれば幸いです。注:記事の出典は、ラボラティックとパートナ関係にある、世界的な従業員経験プラットフォームを提供するCulture Amp社の「The manager experience: The good, bad, and surprising」を日本の読者様向けに訳したものです。
目次
- マネージャーであることのメリットとデメリットとは?
- マネージャーであることのメリット
- マネージャーであることのデメリット
- マネージャーの体験は、従業員の体験にどのような影響を与えるのか?
- 従業員への投資を考えるなら、まずマネージャーから始めよう
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従業員エクスペリエンスに関する議論は、たいていの場合、企業における一般社員(個人貢献者)に焦点が当たっています。マネジャー層の体験については、十分に取り上げられることがほとんどありません。
では、マネジャーたちは今、どう感じているのでしょうか? 彼らが組織と接する際の体験は、より若手の社員とどのように異なるのでしょうか? そして、彼らが直面している特有の課題とは?
マネジャーになることは、多くの人にとってキャリア上の達成の一つです。実際、このポジションには明確な利点もあります。しかし、その裏側には見過ごされがちな負担や課題も存在します。だからこそ、組織は、直属の部下に対する支援だけでなく、マネジャー自身の体験をどう改善していくかも、真剣に考える必要があるのです。
マネージャーであることのメリットとデメリットとは?
カルチャーアンプは、最新の『State of the Manager 2023レポート(英語)』において、マネージャーの役割の光と影の両方を客観的に分析しました。このレポートでは、2,000社を超える企業から収集した調査結果をもとに、マネージャーと現場の個人貢献者の回答を比較しています。
その結果、マネージャーが部下よりも良好な体験をしている分野がある一方で、それ以上に多くの面で課題を抱えていることが明らかになりました。
マネージャーであることのメリット
マネージャーは組織内で一定の権限を持つ立場であり、それゆえに、可視性・安定性・意思決定における裁量といった点で、独自の特権が得られます。マネージャーの経験には、以下のような利点があります:
- 情報へのアクセスが広い:マネージャーの73%が「従業員サーベイの結果について話し合う機会がある」と回答していますが、一般従業員ではその割合は55%にとどまっています。
- 透明性が高い:マネージャーの58%が「報酬や昇進の決定プロセスを理解している」と回答しているのに対し、一般従業員では46%でした。
- 意思決定への影響力がある:マネージャーの74%が「意思決定において自分の意見が取り入れられている」と感じていますが、一般従業員では63%にとどまっています。
- 心理的安全性が高い:マネージャーの81%が「ポジティブ・ネガティブを問わず、本音を表現できる」と回答していますが、一般従業員では72%でした。
マネージャーであることのデメリット
管理職には特典やステータスが伴いますが、マネージャーとしての体験が常にポジティブであるとは限りません。今回の調査データが示す最大の示唆は、「現在のマネージャーは非常にストレスを抱えている」という点です。
マネージャーは、非管理職の従業員よりも、業務量が多く、労働時間が長く、休憩が少なく、ワークライフバランスが悪いと報告しています。以下は、各項目に対するマネージャーの同意率と、非管理職従業員との比較です:
- 「自分の役割に対して業務量が妥当である」:マネージャー 62%、一般従業員 72%
- 「通常の勤務時間内にやるべきことをすべて終えられている」:マネージャー 43%、一般従業員 68%
- 「1日の中で定期的に休憩が取れている」:マネージャー 53%、一般従業員 71%
- 「仕事に圧倒されることはほとんどない」:マネージャー 53%、一般従業員 65%
- 「仕事から離れてしっかり休むことができている」:マネージャー 50%、一般従業員 67%

これらのデータから、マネージャーが過剰な負担を抱えていることが明らかになりました。そして、この状況は組織内で昇進するにつれて改善するどころか、むしろ悪化していく傾向があるのです。
マネージャーの体験は、従業員の体験にどのような影響を与えるのか?
より高いポジションに就くことで、責任と可視性は増します。しかし、上級職にはより多くの部下がつくことも意味します。たとえば、最前線のマネージャーで9人以上の部下を持つのは18%に過ぎませんが、上級リーダー(直属の部下の階層が5階層以上あるようなリーダー)では、その割合が47%に達します。
マネージャーが手いっぱいになればなるほど、その影響は部下にも及びます。データによると、マネージャーの担当人数が増えるにつれて、部下がマネージャーとの関係や組織全体に対して抱く体験は悪化する傾向があります。
Culture Ampのピープルサイエンティストたちは、部下の人数が多いマネージャーのもとで働く従業員は、以下のような項目への同意率が低くなることを明らかにしました:
- 「自分のマネージャーは私のウェルビーイングを本当に気にかけてくれている」
- 「自分のマネージャーは模範的な存在だ」
- 「自分のマネージャーは私のことを大切に思ってくれていると感じる」
- 「自分のマネージャーは私を知ろうと時間を取ってくれる」
- 「自分のマネージャーは私が情熱を感じられることを見つける手助けをしてくれる」
- 「自分のマネージャーは私が会社の中で成功できる最適な場所にいられるようにしてくれる」

直属の部下の数が増えるにつれて、これらの項目への同意率は低下します。これは、マネージャーのストレスが従業員にも容易に伝わるためと考えられます。実際、直属の部下が9人を超えるマネージャーについて話す際、部下が「ストレスを感じていそう」「燃え尽きている」といった言葉を使う割合は2倍になります。
従業員への投資を考えるなら、まずマネージャーから始めよう
マネージャーは、従業員体験全体をかたちづくるうえで極めて重要な役割を担っています。しかし、時間やリソースに余裕がなければ、従業員に十分な関わりを持つことはますます困難になります。
このデータが示しているのは興味深いポイントです。――従業員体験を改善する出発点は、実は「従業員」ではなく「マネージャー」だということです。
マネージャーが最善の仕事をするためには、適切なサポート、ツール、リソース、そしてトレーニングが必要です。なぜなら、マネージャーへの投資は、結果的に全従業員への投資につながるからです。
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